2割特例終了後、消費税はいくら増える?年商880万円の例で3割特例・簡易課税を比較 プレビュー|SSK税理士法人
インボイス|令和8年度税制改正

2割特例終了後、消費税はいくら増える?年商880万円の例で3割特例・簡易課税を比較

インボイス登録を機に課税事業者になった方向けの「2割特例」は、個人事業者の場合、2026年分の申告で終わります。2027年分と2028年分は、要件を満たす個人事業者であれば「3割特例」を使えます。年商880万円のモデルケースで、納税額がどう変わるかを計算しました。

この記事の要点

2割特例とは、売上にかかる消費税額の2割を納付税額とできる経過措置です。個人事業者は2026年分が最後で、2027・2028年分は要件を満たせば3割特例(売上税額の3割を納付)に移ります。

下のモデルケース(税込売上880万円)では、2割特例の16万円が3割特例で24万円になり、年間8万円増えます。3割特例が終わる2029年分以降は、簡易課税か本則課税での計算になります。

目次

2割特例と3割特例の適用期間

2割特例を使えるのは、2026年9月30日を含む課税期間までです。個人事業者の課税期間は1月〜12月なので、2026年分(申告期限は2027年3月31日)が最後になります。

その後の経過措置として、令和8年度税制改正で3割特例ができました。対象は個人事業者だけで、法人は使えません。

申告する年分(個人事業者)選べる計算方法
2026年分まで2割特例・簡易課税・本則課税
2027年分・2028年分3割特例・簡易課税・本則課税
2029年分以降簡易課税・本則課税

※各制度の適用要件を満たす場合です。

3割特例の主な要件

・インボイス発行事業者の登録を受けたことで、免税事業者から課税事業者になった個人事業者であること
・基準期間(適用を受ける年の2年前)の課税売上高が1,000万円以下であること
・インボイス発行事業者の登録を受けていること
このほか、調整対象固定資産などの取得で免税事業者に戻れない期間にある方や、課税期間を短縮している方なども対象外です。詳しくは国税庁の令和8年度税制改正特集の適用可否フローチャートで確認できます。

年商880万円のモデルケースで比較

以下は説明用の架空のモデルケースです。コンサルティング業を営む個人事業者で、簡易課税では第5種事業(みなし仕入率50%)に該当するものとして計算しています。

試算の前提

・税込売上 880万円(うち消費税 80万円)
・消費税のかかる経費 税込165万円(うち消費税 15万円)
・売上・対象経費はすべて税率10%
・本則課税では、経費に含まれる消費税15万円を全額、仕入税額控除できるものとする
・2025年〜2029年の売上・経費は毎年同じとし、各制度の適用要件を満たすものとする
・地方消費税を含めた概算(実際の計算は国税・地方税を分けて行うため、端数処理などで多少変わります)

計算方法計算納付税額(年)
2割特例(2026年分まで)80万円 × 20%16万円
3割特例(2027・2028年分)80万円 × 30%24万円
簡易課税(第5種事業)80万円 −(80万円 × 50%)40万円
本則課税80万円 − 15万円65万円
2026年分 → 2027年分(2割特例 → 3割特例)
24万円 − 16万円 = 年間8万円の増加

この前提では、2027・2028年分は3割特例の24万円がいちばん少なくなります。第5種事業の簡易課税は売上税額の50%を納める計算になるので、3割特例より多くなります。

2029年分以降は3割特例がなくなります。売上と経費が同じままなら、簡易課税で40万円、本則課税で65万円です。2026年分と比べると、簡易課税でも年間24万円の増加になります。

なお、事業区分は業種名ではなく、実際の事業内容で判定します。また、みなし仕入率が70%を超える第1種(卸売業)・第2種(小売業など)では、3割特例より簡易課税のほうが納税額が少なくなる場合があります。本則課税が有利かどうかは、経費の額と内容によって変わります。

簡易課税制度選択届出書の提出期限

簡易課税を使うには「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出します。期限は、原則と、2割特例・3割特例からの移行措置とで異なります。

区分提出期限
原則適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで
(個人事業者が2027年分から適用する場合は2026年12月31日)
移行措置
(2割特例・3割特例を適用した翌課税期間から簡易課税にする場合)
簡易課税の適用を受けようとする課税期間の申告期限まで
・2026年分で2割特例 → 2027年分から簡易課税:2028年3月31日
・2028年分で3割特例 → 2029年分から簡易課税:2030年4月1日

移行措置は、2割特例・3割特例を適用した課税期間の翌課税期間に限られます。モデルケースのように2027・2028年分で3割特例を使う場合、簡易課税への切り替えを検討するのは2029年分からです。簡易課税は、一度選ぶと原則2年間は継続して適用する必要があります。

法人化した場合の消費税

3割特例は個人事業者のための制度なので、法人は適用を受けられません。

資本金1,000万円未満で設立した法人は、基準期間がない設立当初は原則として免税事業者です。ただし、インボイス発行事業者の登録を設立日から受けた場合は、設立1期目から課税事業者として消費税を納めます(設立した事業年度の末日までに登録申請書を提出すれば、設立日にさかのぼって登録を受けられる取扱いがあります)。期の途中で登録を受けた場合は、登録日以後の取引が課税の対象です。

モデルケースと同じ年間売上・同じ事業内容で、12か月の課税期間を前提に、法人が設立日から登録を受けて簡易課税(第5種事業)を選んだとすると、納付税額は40万円です。個人で3割特例を使った場合の24万円より16万円多くなります。このケースでは、法人化しても消費税の負担は減りません。

新設法人は、設立した課税期間の末日までに簡易課税制度選択届出書を提出すれば、その課税期間から簡易課税を適用できます。ただし、調整対象固定資産や高額特定資産を取得した場合など、一定期間は届出ができない制限があります。

法人化するかどうかは、消費税とは別に、利益の額、役員報酬の設定、法人税等、個人の所得税・住民税、会社負担分を含む社会保険料、設立費用と毎年の維持費(決算・申告の費用、法人住民税の均等割など)を並べて試算して判断します。

2026年分の申告までに確認しておくこと

  • 2025年・2026年の課税売上高(3割特例の基準期間の判定に使います)
  • 自分の事業が簡易課税のどの事業区分に当たるか
  • 2027年以降に設備投資など大きな課税仕入れの予定があるか(本則課税との比較や、簡易課税の届出制限に関係します)
  • 2029年分以降の納税額の見込みと、その納税資金の準備

よくある質問

3割特例を使えないのはどのような場合ですか?

法人、インボイス発行事業者でない課税事業者、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える方は対象外です。このほか、調整対象固定資産などを取得して免税事業者に戻れない期間にある方や、課税期間を短縮している方なども適用を受けられません。該当するかどうかは国税庁の適用可否フローチャートで確認できます。

3割特例と簡易課税は、どちらが納税額が少なくなりますか?

事業区分と仕入れの状況によって変わります。第5種事業(みなし仕入率50%)であれば、簡易課税の納付税額は売上税額の50%になるため、3割特例のほうが少なくなります。一方、みなし仕入率が70%を超える事業区分(第1種・第2種)では、簡易課税のほうが少なくなる場合があります。

簡易課税制度選択届出書は、いつまでに提出すればよいですか?

原則は、簡易課税の適用を受けようとする課税期間の初日の前日までです。ただし、2割特例または3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間から簡易課税を使う場合は、その翌課税期間の申告期限までに提出すれば足ります。たとえば2026年分で2割特例を適用した個人事業者が2027年分から簡易課税を使う場合、期限は2028年3月31日です。

税理士をお探しの方・法人化を検討中の方へ

「これから顧問税理士を探したい」「法人化を考えている」「今の税理士から変えたい」——そんな方のご相談をお受けしています。消費税の計算方法の選択から法人化の判断まで、会社と社長個人の手残りを一緒に見ます。

顧問・法人化を相談する
徳島・東京・全国オンライン対応
税

この記事を書いた税理士

佐々木 りえ税理士登録番号:第134007号

SSK税理士法人 代表税理士。法人税と相続税を横断して扱い、「社長の会社と、社長個人の人生をつなぐ」ことをコンセプトに、ひとり社長・小規模法人の顧問と小規模相続を支援。YouTube等でも税務情報を発信。徳島・東京・全国オンライン対応。

法人税相続税ひとり社長・法人化クラウド会計

※本記事は2026年10月5日時点の法令・国税庁資料にもとづく一般的な情報です。試算は架空のモデルケースで、実際の納付税額は事業内容や取引の状況によって異なります。参考:国税庁「令和8年度税制改正特集(インボイス経過措置の見直し等)」/国税庁「インボイス制度に関するお知らせ」(令和8年9月)

この記事を書いた人

佐々木 梨絵のアバター 佐々木 梨絵 代表社員・税理士

徳島県徳島市出身。
信託銀行に勤めたのち、東京、大阪の大手税理士法人で相続税申告、相続対策コンサルティング、事業承継案件に従事。2024年、SSK税理士法人代表税理士。
資産規模の大きな個人や上場企業オーナーの案件から小規模案件、国際相続案件まで相続税申告の経験が豊富。また、金融機関でのセミナー講師やコラムなどの執筆も手掛ける。

目次